【徹底解説】EQで音が「意図せず変わる」本当の理由|倍音のメカニズムで失敗しないDTM術

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EQで音が「意図せず変わる」悩み、わかりますよね?

DTMや宅録でミックスをしていると、誰しもが経験する悩みの一つに「EQをかけると、どうも音が痩せてしまったり、逆にモコモコしてしまったり、元の音より悪くなってしまう」というものがあります。

「もっとクリアにしたいのに、なんだかキンキンする音になってしまった…」とか、「低音を太くしたいのに、ぼやけて聴こえるようになった…」など、意図しない音の変化に戸惑うことは、私も最初は本当によくありました。

実はこれ、多くのDTMerが経験する「あるある」なんです。そして、その原因は、周波数倍音の関係を深く理解していないことにある場合がほとんどです。

この記事では、なぜEQで音が「意図せず変わる」のか、その本質的な理由周波数と倍音の関係から深掘りしていきます。

この記事を最後まで読んでいただければ、EQを単なる「音量調整ツール」としてではなく、「音色を作り変える強力な道具」として自在に操るための考え方と具体的な実践方法が身につくでしょう。

なぜEQで音が「意図せず変わる」のか?本質的なメカニズム

音は空気の振動によって伝わる波です。この波には、「音の高さ」を決める周波数と、「音の大きさ」を決める振幅という要素があります。

そして、私たちが聴いているほとんどの音は、一つの周波数だけで構成されているわけではありません。例えば、ギターの「ド」の音を鳴らしたとします。

この時、一番低い周波数の「ド」の音が鳴っているだけでなく、その「ド」の音の整数倍の周波数(2倍の「ド」、3倍の「ソ」、4倍の「ド」など)の音も同時に鳴っています。

この一番低い周波数の音を「基音(きおん)」と呼び、その整数倍で鳴っている他の音を「倍音(ばいおん)」と呼びます。専門用語では「ハーモニクス」とも言いますね。

実は、この倍音のバランスこそが、楽器ごとの音色(ティンバー)や質感を作り出しているんです。同じ「ド」の音でも、ピアノとギター、シンセサイザーで全く違う音色に聴こえるのは、この倍音の構成が異なるからなんですね。

EQが倍音に与える影響

EQは、特定の周波数帯域の音量を上げたり下げたりするツールです。

例えば、ボーカルの基音200Hzあたりだとします。このボーカルには、基音の他に400Hz600Hz800Hz…といった倍音成分も含まれています。

もしあなたが「ボーカルの低音を少しカットしよう」と思って、100Hz〜200HzあたりをEQでカットしたとします。この時、ボーカルの基音に近い部分を削ることになるわけですが、同時に、その基音と密接に関係する倍音のバランスも変化させてしまっているんです。

例えば、150Hzあたりをカットすると、ボーカルの「太さ」や「温かみ」を形作っている倍音成分も一緒に削られてしまい、結果として「痩せた」印象のボーカルになってしまう、ということが起こりえます。

また、EQのフィルターには「ピーキング」「シェルビング」「ハイパス」「ローパス」といった種類があります。

  • ピーキングフィルターは、特定の周波数を中心に山型または谷型に増減させるもので、ピンポイントな調整に使います。
  • シェルビングフィルターは、ある周波数から上(または下)の帯域全体を棚のように持ち上げたり下げたりするものです。
  • ハイパスフィルター(ローカットフィルター)は、設定した周波数より低い音をカットし、高域だけを通します。
  • ローパスフィルター(ハイカットフィルター)は、設定した周波数より高い音をカットし、低域だけを通します。

これらのフィルターが、基音だけでなく、その音に含まれる無数の倍音成分にも広範囲に影響を与えるため、意図しない音の変化が起きてしまうのです。

EQ処理の「判断の軸」を持つことが成功への鍵

では、どうすれば意図した通りにEQを使いこなせるようになるのでしょうか?その鍵は「判断の軸」を持つことです。

EQをかける前に、まず「何のためにEQをかけるのか?」という目的を明確にすることが最も重要です。

  • 音をクリアにしたいのか?
  • 暖かみを出したいのか?
  • 抜けを良くしたいのか?
  • 他の楽器との干渉を避けたいのか?

この目的意識が曖昧なままEQをいじってしまうと、かえって音を悪くしてしまいます。

失敗例と成功例で考える

失敗例:なんとなく高域を上げた結果

「ボーカルを前に出したいから、高域を上げてみよう」と、漠然と5kHz以上シェルビングフィルターで大きくブーストした結果、ボーカルがキンキンして耳に痛い、不自然な音になってしまった。

これは、ボーカルの倍音構成や、高域に含まれる「子音の明瞭度」と「耳障りなノイズ」のバランスを考慮せず、広範囲に音量を上げてしまったためです。

成功例:目的意識を持った調整

「ボーカルの明瞭度を上げつつ、耳障りな高域は抑えたい」という目的で、3kHz〜5kHzあたりをピーキングフィルター+2dBほどわずかにブーストし、同時に8kHz以上の帯域をローパスフィルターで緩やかにカットした。

これにより、ボーカルは自然に聞き取りやすくなり、耳に刺さるような不快感もなくなりました。これは、強調したい倍音成分と抑えたい倍音成分を見極め、それぞれの帯域に合ったフィルターとゲイン量でアプローチできた結果と言えるでしょう。

このように、EQをかける目的と、その目的がどの周波数帯の、どの倍音成分に影響するのかを想像する習慣が大切です

今日からできる!倍音を意識した実践的EQアプローチ

それでは、具体的なEQ処理のステップと、プロの現場での考え方をご紹介します。

ステップ1:まずは「引き算」から始める

EQ処理の基本は「引き算」から始めることです。特に、不要な低域や耳障りな高域をカットすることで、ミックス全体のクリアさが格段に向上します。

例えば、ボーカルのトラックで、80Hz以下の低域ハイパスフィルターで緩やかにカットします。

これにより、マイクが拾った空調ノイズや不要なルームノイズ、破裂音の低域成分が整理され、他の楽器との周波数帯の競合を防げます。特に男性ボーカルやベース、キックなど、低域の楽器が複数ある場合に有効です。

同様に、シンバルやハイハットといった高域楽器でも、不必要な超高域(15kHz以上)を緩やかなローパスフィルターでカットすることで、耳に刺さるような「シャリシャリ感」を抑え、自然な響きを保つことができます。これは、人間の可聴域を超えた、あるいは耳障りな高次倍音を整理するイメージです

楽器 周波数帯 調整例 効果
ボーカル 80Hz以下 ハイパスフィルターで緩やかにカット 不要な低域ノイズ除去、明瞭度向上
ギター 100Hz以下 ハイパスフィルターで緩やかにカット 低域の濁り除去、ミックスの整理
シンバル/ハイハット 15kHz以上 ローパスフィルターで緩やかにカット 耳障りな超高域ノイズ除去、自然な響き

失敗パターン:急激なフィルターでカットしすぎると、音の「芯」や「温かみ」が失われてしまいます。

回避方法:スロープ(傾斜)を緩やかに設定し、バイパスボタンを使いながら、元の音と聞き比べつつ慎重に調整しましょう。

ステップ2:強調したい「質感」をピンポイントで探す

次に、特定の楽器の「おいしい」部分、つまり強調したい倍音成分を探します。

例えば、アコースティックギターのキラキラ感をもう少し出したい場合、EQのバンドを4kHz〜8kHzあたりに設定し、Q値(帯域幅)を狭めにして、ゲインを少しずつ上げて最も心地よいポイントを探します。

この帯域には、ギターの弦が擦れる音や、箱鳴りの高次倍音が含まれており、これをわずかにブーストすることで、音に空気感輝きを加えることができます。具体的には、5kHzあたりを+2dB程度上げてみるのも良いでしょう。

キックドラムのアタック感を強めたいなら、3kHz〜5kHzあたりをわずかにブーストすると良いでしょう。これはキックの高次倍音がアタック感に強く寄与しているためです。4kHz+1.5dB程度、Q値をやや狭くして試してみてください。

周波数帯 音の質感/倍音 調整例 効果
200Hz〜400Hz 低域の暖かみ、音の厚み ベースやギターの厚み付け 音にボディ感を与える
1kHz〜2kHz 中域の存在感、アタック感 スネアのアタック、ボーカルの押し出し 音の輪郭を際立たせる
3kHz〜5kHz 高域の明瞭度、アタック感 ボーカルの子音、ドラムのアタック 音をクリアに、前に出す
6kHz〜10kHz 空気感、輝き、倍音の煌めき シンバル、アコギのきらめき 音に広がりと透明感を与える

失敗パターン:広範囲にゲインを上げすぎると、音全体が不自然に強調されたり、他の楽器とぶつかったりします。

回避方法:Q値を調整して狙った倍音成分にだけアプローチし、ゲインは±3dB以内を目安に、少しずつ調整しましょう。

プロの現場での実例とコツ

実際の制作現場では、EQをかける前にまず音源そのものの選択録音環境マイクの位置を徹底的に吟味します。

なぜなら、EQはあくまで「微調整」や「特定のキャラクター付け」のために使うもので、根本的な音の問題をEQだけで解決しようとしないのがセオリーだからです

また、プロは「マスキング」という現象を意識してEQを使います。ある楽器の特定の周波数帯が、別の楽器の同じ周波数帯を覆い隠してしまう現象のことですね。

これを防ぐために、例えばボーカルの美味しい帯域(2kHz〜4kHz)を際立たせたい場合、あえて同じ帯域で重なっているギターの音をわずかにカットする、といった「空間作り」の考え方も重要です。

「この音をどうしたいか」だけでなく、「この音がミックス全体の中でどう聴こえてほしいか」という視点を持つことが、EQマスターへの近道と言えるでしょう。

今日からできるEQ実践リスト

今日からすぐに試せる具体的なアクションをまとめました。

  • EQをかける前に、そのトラックの音を注意深く聴き、どんな音の「質感」や「悩み」があるかをメモしてみましょう。
  • 調整したい帯域だけでなく、その周辺の倍音がどう変化するか想像する習慣をつけましょう。
  • EQをかける前後で、必ずEQプラグインのバイパスボタンを使い、元の音と変化した音を比較しましょう。
  • ゲイン調整は基本的に±3dB以内を目安に、少しずつ行うことを心がけましょう。
  • 慣れてきたら、異なるEQプラグインを試して、それぞれが音に与える倍音の変化を感じ取ってみましょう。

まとめ:EQは「音色をデザインする」ツール

EQで音が「意図せず変わる」のは、周波数と倍音の関係を深く理解していなかったから、ということがお分かりいただけたでしょうか。

EQは単なる音量調整ではなく、音色をデザインし、ミックス全体のバランスを整えるための強力なツールです。

今回の記事で学んだ基音と倍音のメカニズム、そして実践的なEQアプローチをぜひご自身のDTM制作に活かしてみてください。

「この音をどうしたいか」という明確な目的意識を持ってEQと向き合えば、きっとあなたのミックスは劇的に変化するはずです。今日から早速、あなたのトラックで試してみてくださいね!

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この記事を書いた人

音脳ラボ運営。宅録・DTM・歌ってみたを中心に、実体験ベースで音作りを研究しています。

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