「自分のDTMの音、なんかプロと違う…」と感じるあなたへ
あなたは今、こんな風に感じていませんか?
- 「せっかく作った曲なのに、プロの音源と比べると何かが違う…」
- 「もっと抜けの良いボーカルにしたいのに、どうしても埋もれてしまう…」
- 「迫力のあるキックやベースにしたいのに、なんだか物足りない…」
DTMを始めたばかりの方や、ある程度経験のある方でも、こうした悩みは尽きないものです。もしかしたら、「自分の機材が悪いのか」「センスがないのか」と、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
でも、ご安心ください。その悩み、私も最初はそうでしたし、多くのクリエイターが通る道なんです。
この記事では、あなたのDTMサウンドが「なぜ他と違うのか」という本質的な理由を、音響メカニズムから深掘りします。そして、今日からすぐに実践できる具体的な改善策を丁寧にお伝えしていきます。
「音が違う」と感じる原因を理解し、正しい知識と実践的なアプローチを身につければ、あなたのサウンドは劇的に変化します。一緒に、理想のサウンドを目指しましょう!
「音の個性」はどこで生まれるのか?問題の本質を深掘り
なぜ、あなたのDTMサウンドは「プロの音」と違うと感じるのでしょうか?
その答えは、単に「良い機材を使っているか」や「センスがあるか」といった抽象的な話ではありません。音の物理的な特性と、それをどれだけ意図的にコントロールできているかに深く関係しています。
音が持つ「個性」は、主に以下の4つの要素によって決定されます。
1. 周波数スペクトル:音色のDNA
まず、音の最も基本的な違いは「周波数スペクトル」にあります。これは、ある音がどのような周波数帯域の成分を、どれくらいの強さで含んでいるかを示すものです。
例えば、同じ「Cの音」でも、ピアノとギターでは全く違う音色に聞こえますよね。これは、それぞれが持つ倍音(ハーモニクス)の構成が異なるためなんです。
倍音とは、基となる音(基音)の整数倍の周波数を持つ音の成分のことです。楽器や声の特徴的な音色は、この倍音構成によって決まります。シンセサイザーの「ノコギリ波」や「矩形波」がそれぞれ異なる音色に聞こえるのも、含まれる倍音の種類やバランスが違うからなんですよ。
もしあなたの音が「こもっている」「抜けが悪い」と感じるなら、それは各楽器の周波数スペクトルが適切に整理されていない可能性が高いです。特に、似たような周波数帯域を持つ複数の音が混在していると、互いにマスキングし合ってしまい、結果的に音が濁って聞こえてしまうのです。
2. ダイナミクス:音の表情と生命力
次に、音の大小の変化、つまり「ダイナミクス」も重要な要素です。プロの楽曲は、音がただ大きいだけでなく、音の始まり(アタック)から終わり(リリース)にかけての強弱が非常に丁寧にコントロールされています。
例えば、ドラムのキックやスネアは、アタックがしっかりしていることで「パンチ感」や「迫力」が生まれます。ボーカルも、常に同じ音量で歌うのではなく、感情に合わせて声量を変化させることで、より豊かな表現になりますよね。
DTMでこのダイナミクスをコントロールするのがコンプレッサーなどのエフェクトです。しかし、コンプレッサーのかけ方が不適切だと、音が潰れてしまったり、逆にアタックが弱くなりすぎて迫力が失われたりすることがあります。
3. 空間情報:音の奥行きと広がり
音の「広がり」や「奥行き」「距離感」は、主にリバーブ(残響)やディレイ(遅延)といった空間系エフェクトによって作られます。同じ音源でも、狭い部屋で鳴っているように聞こえたり、広いホールで響いているように聞こえたりするのは、この空間情報が違うためです。
残響音は、壁や天井などからの初期反射音と、その後続く残響音によって構成されます。これらのバランスや長さ(残響時間)をコントロールすることで、音の立つ位置や空間の広さを表現できるのです。
あなたの音が「平坦に聞こえる」「広がりがない」と感じるなら、空間系のエフェクトが不足しているか、あるいはかけ方が適切でないのかもしれません。
4. 位相:複数の音が重なる際の波のズレ
最後に、少し専門的になりますが「位相」も音の個性に大きく影響します。位相とは、音の波形が時間軸上のどの位置にあるかを示すものです。複数の音が重なり合うとき、この位相がずれていると、特定の周波数帯域で音が打ち消し合ったり、強調し合ったりする現象が起こります。
例えば、複数のマイクでドラムを録音したり、同じ音源を複製してパンを振ったりした際に、位相がずれることがあります。すると、ステレオでは問題なくても、モノラルで再生した時に音が痩せたり、特定の周波数が消えたりすることがあるんです。
機材の差だけで音の良し悪しが決まるわけではありません。大切なのは、音の物理的特性を理解し、それを意図的にコントロールする知識とスキルなんです。
「良い音」をどう判断するか?判断の軸を養う
「じゃあ、どうすればプロの音に近づけるの?」
この問いに答えるためには、「良い音とは何か?」という判断軸を自分の中に持つことが重要です。
失敗例:「なんとなく」の作業は泥沼へ
DTM初心者が陥りやすい失敗パターンは、「なんとなく」で作業を進めてしまうことです。
- 「音がこもっている気がするから、なんとなくEQで高域をブーストしてみよう」
- 「音が小さいから、なんとなくコンプレッサーを強くかけてみよう」
- 「リバーブをかけたらそれっぽくなるかな、とプリセットをそのまま適用する」
このような「なんとなく」の作業では、何を改善したくて、その結果どうなったのかが不明確です。結果として、音がさらに悪化したり、原因が分からなくなって泥沼にはまってしまったりすることが非常に多いんです。
成功例:「意図」と「比較」で道を拓く
一方、プロのエンジニアや経験豊富なクリエイターは、常に明確な「意図」と客観的な「比較」を持って作業を進めます。
- 「このボーカルは3kHz付近の明瞭度が足りないから、EQでピンポイントにブーストしてみよう」
- 「キックのアタックが弱いから、コンプレッサーのアタックタイムを長く設定して強調してみよう」
- 「この曲の雰囲気には、残響時間が2秒程度のプレートリバーブが合うはずだ」
このように、具体的な目標設定と、その目標に到達するための手段を明確にすることが成功への鍵です。
そして、その意図通りになっているかを判断するために、「リファレンス楽曲との比較」や「A/B比較(処理前と処理後の比較)」を徹底的に行います。プロの現場では、常に「なぜこの処理をするのか」「その結果どうなったのか」を自問自答し、耳で確認しながら音作りを進めているのです。
「良い音」とは、聴き手にとって心地よいだけでなく、作り手の「意図」が明確に表現された音だと言えるでしょう。
今日からできる!サウンドを劇的に変える実践的アプローチ
それでは、ここからはあなたのDTMサウンドを劇的に改善するための具体的なステップをご紹介します。今日からすぐに実践できることばかりですので、ぜひ試してみてください。
ステップ1:リファレンス楽曲分析の習慣化
自分の音がプロと違うと感じるなら、まず「違い」を具体的に言語化する練習から始めましょう。
失敗パターンと回避策
- 失敗パターン: 漠然とプロの曲を聴いて「なんか良いな」で終わってしまう。
- 回避策: 自分の楽曲とプロのリファレンス楽曲をDAWに取り込み、交互に聴き比べながら、具体的にどこがどう違うのかをメモに書き出す習慣をつけましょう。
聴くべきポイントの例
以下のポイントに注目して、自分の曲とリファレンス曲を比較してみてください。
| 要素 | チェックポイント |
|---|---|
| 低域 (20Hz-200Hz) | キックやベースの「アタック感」「量感」「クリアさ」 |
| 中低域 (200Hz-800Hz) | 音のこもり、厚み、分離感 |
| 中高域 (800Hz-5kHz) | ボーカルやギターの「抜け感」「存在感」「明瞭度」 |
| 高域 (5kHz-20kHz) | シンバルやハイハットの「きらびやかさ」「空気感」「広がり」 |
| ダイナミクス | 音の大小の変化、パンチ、安定感 |
| 空間 | リバーブやディレイの量、広がり、奥行き感 |
プロの現場での実例: 実際の制作現場では、複数のリファレンス楽曲を準備し、曲調やジャンルによって使い分けています。耳を鍛える最も効果的な方法の一つであり、自分の「意図」を明確にするための第一歩です。
ステップ2:EQで「周波数の交通整理」を実践
各楽器が持つ周波数帯域を整理し、お互いの邪魔をしないようにする「周波数の交通整理」がEQの最も重要な役割です。
失敗パターンと回避策
- 失敗パターン: 音を大きくしようと、ブースト(持ち上げる)ばかりしてしまう。結果、音がこもったり、濁ったりする。
- 回避策: EQは「足すではなく削る」を意識しましょう。各トラックで不要な帯域を削ることで、他の楽器が聞こえやすくなり、全体的な明瞭度が向上します。
具体的なEQ設定の目安
以下の設定例を参考に、各トラックで試してみてください。
| 楽器 | 周波数帯 | 調整例 | 効果 |
|---|---|---|---|
| キック | 200Hz-400Hz | -3dB〜-6dB カット(Q値やや広め) | ベースとの分離を良くし、音のこもりを解消 |
| ベース | 50Hz以下 | ハイパスフィルターで緩やかにカット | 不要な超低域をカットし、ミックス全体のクリアさを確保 |
| ボーカル | 100Hz以下 | ハイパスフィルターでカット | マイクが拾った不要な低域ノイズをカット |
| ボーカル | 3kHz-5kHz | +1dB〜+3dB ブースト(Q値やや狭め) | 明瞭度を高め、歌詞を聞き取りやすくする |
専門用語深掘り: EQで音がクリアになるのは「マスキング効果」を解消しているからです。似た周波数帯の音が重なると、片方の音がもう片方を隠してしまい、聞こえにくくなる現象がマスキングです。EQで不要な帯域をカットすることで、それぞれの音がはっきりと聞こえるようになります。
ステップ3:コンプレッサーで「ダイナミクスをコントロール」
コンプレッサーは、音の大小の幅(ダイナミクス)を調整し、安定感やパンチを出すための強力なツールです。
失敗パターンと回避策
- 失敗パターン: コンプレッサーをかけすぎて、音が潰れてしまったり、不自然に聞こえたりする。
- 回避策: まずはゲインリダクション(音量圧縮量)が-3dB〜-5dB程度に収まるように、わずかな変化を狙って調整しましょう。
具体的なコンプレッサー設定の目安(ボーカルの場合)
ボーカルに自然な安定感と存在感を与えるための設定例です。
| パラメーター | 設定値の目安 | 効果 |
|---|---|---|
| Ratio (レシオ) | 2:1〜3:1 | 音量圧縮の度合い。自然な圧縮量。 |
| Attack Time (アタックタイム) | 30ms〜50ms | 圧縮が始まるまでの時間。早すぎるとアタックが潰れる。 |
| Release Time (リリースタイム) | 100ms〜250ms | 圧縮が解除されるまでの時間。短すぎるとポンプ感、長すぎると音が引っ込む。 |
| Threshold (スレッショルド) | ゲインリダクションが-3dB〜-5dBになるよう調整 | 圧縮が始まる音量レベル。 |
専門用語深掘り: アタックタイムとリリースタイムは、音の輪郭やグルーヴに大きく影響します。アタックタイムが短いと、音の立ち上がりが速く聞こえますが、アタック成分(叩いた音の最初など)が潰れやすくなります。逆にアタックタイムが長いと、アタック成分を通過させてから圧縮が始まるため、アタックを強調することができます。
プロの現場での実例: ドラムには「パラレルコンプレッション」という手法がよく使われます。これは、コンプレッサーを強くかけた音と、かけていない音を混ぜることで、音に厚みや勢いを与えつつ、自然なダイナミクスを保つテクニックです。
ステップ4:リバーブ・ディレイで「空間をデザイン」
リバーブやディレイは、音に奥行きや広がりを与え、楽曲に豊かな空間を演出します。
失敗パターンと回避策
- 失敗パターン: リバーブをかけすぎて、音が遠く聞こえたり、ぼやけてしまったりする。
- 回避策: リバーブは「センド/リターン」で使い、ドライ音(エフェクトなしの音)とのバランスを意識しましょう。
具体的なリバーブ設定の目安(ボーカルの場合)
ボーカルに自然な空間と奥行きを与えるための設定例です。
| パラメーター | 設定値の目安 | 効果 |
|---|---|---|
| リバーブタイプ | Plate (プレート) または Hall (ホール) | ボーカルに馴染みやすい響き |
| Decay Time (ディケイタイム) | 1.5秒〜2.5秒 | 残響が消えるまでの時間。長すぎると音が濁る。 |
| Pre-Delay (プリディレイ) | 20ms〜50ms | ドライ音の後にリバーブが始まるまでの時間 |
| Wet/Dry (ウェット/ドライ) | センドリターンではWetを100%に、センド量を調整 | 原音とリバーブ音のバランス |
専門用語深掘り: Pre-Delayは、音の距離感をコントロールする上で非常に重要なパラメーターです。初期反射音をシミュレートする役割も持ち、プリディレイを長くすることで、ボーカルそのものの明瞭度を保ちつつ、後から来る残響によって奥行きを表現できます。
今日からできること: リバーブは複数の種類を使い分け、各楽器に合った空間を演出してみてください。例えば、ドラムには短い残響のルームリバーブ、ボーカルには長いプレートリバーブなどです。
まとめ:あなたの「個性」を「意図」に変える
いかがでしたでしょうか?
「自分の音が他人と違う」と感じる原因は、決してあなたのセンスや機材のせいではありません。それは、音の物理的特性を「意図的にコントロールできていない」だけなんです。
今日からできることは、以下の3つです。
- リファレンス楽曲を徹底的に分析し、自分の「理想の音」を具体的に言語化する。
- EQは「カット」から始め、各楽器の周波数帯域を整理
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