EQをかけると、どうも音がキンキンしたり、逆にブーミーになったりして、かえって不自然になった経験はありませんか?
せっかく音を良くしようと思ったのに、理想とはかけ離れた結果になってしまうと、本当にがっかりしますよね。私もDTMを始めたばかりの頃は、同じ悩みを抱えていました。
実は、その原因は「いらない音」を知らないことにあるのかもしれません。この記事では、EQで音を自然に、そしてクリアにするための考え方と具体的なアプローチを、音脳ラボが長年の経験から培った「引き算のEQ術」としてお伝えします。
問題の本質:なぜEQで音が不自然になるのか
多くの方がEQを「音を良くする魔法のツール」だと捉え、ついつい「足し算」で使ってしまいがちです。例えば、「このボーカル、もっと輝かせたいな」と思って高音域をブーストしたり、「ベースにもう少し迫力が欲しい」と低音域を強調したりする、といった具合です。
しかし、EQは、決して音を足して良くするだけのツールではありません。むしろ、不要な部分を削ぎ落とす「引き算」が、自然なサウンドを作る上で非常に重要なのです。
なぜブーストすると不自然になるのでしょうか?特定の周波数帯をブーストすると、その帯域だけでなく、その周辺の周波数や、音に含まれるハーモニクス(倍音)まで不自然に増幅されてしまいます。
その結果、音が耳に刺さるようにキンキンしたり、低音が濁ってブーミーになったりして、ミックス全体がごちゃついて聞こえてしまうのです。
判断の軸:「いらない音」を見つけるための考え方
では、「いらない音」とは一体何なのでしょうか。それは、楽曲全体にとって不要な、または邪魔になる周波数帯の音のことです。
一つ一つの楽器には、その楽器らしい「美味しい周波数」があります。しかし、それと同時に、あまり聴かせたくない「邪魔な周波数」も存在します。例えば、ギターのボディの共鳴音や、ボーカルの特定の音節で発生する嫌な響きなどがこれに当たります。
さらに、複数の楽器が鳴り合った時に、同じような周波数帯にそれぞれの音の美味しい部分が集中すると、音がぶつかり合ってしまいます。これを「マスキング」と呼び、結果として音がこもって聞こえたり、特定の楽器が埋もれてしまったりする原因となるのです。
判断の軸は、「その音が、本当に楽曲全体にとって必要な音なのか?」という視点です。
ソロで聴いた時には良い音に聞こえても、他の楽器と混ぜた時に邪魔になる音はたくさんあります。個々の音の良さだけでなく、ミックス全体の中での役割を考えて、どの音が「いらない音」なのかを見極めることが大切なのです。
実践的アプローチ:今日からできる「引き算のEQ」
まずは「掃除」から始めましょう
EQをかける際、まずはハイパスフィルター(HPF)とローパスフィルター(LPF)を使って、不要な帯域をカットすることから始めましょう。
例えば、ボーカルの場合、人間の声として意味のある周波数は主に80Hz〜12kHz程度です。そのため、80Hz以下の帯域は思い切ってHPFでカットしても、ボーカルの存在感は損なわれず、むしろミックス全体の低域がスッキリします。
同様に、ハイハットのような高音域がメインの楽器であれば、500Hz以下の帯域をHPFでカットすることで、余計な低域の濁りをなくすことができます。このように、各楽器の「美味しい帯域」の外側にある音は、まずカットしてしまうのが基本です。
「サーチ&デストロイ」で嫌な音を排除する
次に、特定の耳障りな周波数を見つけてカットするテクニックをご紹介します。これを「サーチ&デストロイ(探して破壊する)」と呼びます。
やり方はとてもシンプルです。まず、EQのバンドを一つ選び、Q値(周波数帯域の幅)を広めに設定して、ブースト量を大きくしてください。そして、ブーストした帯域をスイープ(動かしながら)していくと、ある特定の場所で「キンキン」「ブーミー」といった不快な響きが強調されるポイントが見つかるはずです。
その不快なポイントが見つかったら、今度はブースト量をカット側に大きく振り切り、Q値を狭めて、ピンポイントでその周波数をカットします。最初は大きくカットして、音が自然に聞こえるまで少しずつカット量を戻していくのがコツです。
失敗パターンとその回避方法
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カットしすぎると音が痩せる:
「いらない音」を意識しすぎて、必要な成分まで削ってしまい、音が薄く、迫力のないものになってしまうことがあります。最初はほんの少し(例えば-3dB程度)のカットから試して、効果を確認しながら調整しましょう。
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ソロで判断しすぎると、ミックスで馴染まない:
個々の楽器をソロで聴きながらEQを調整すると、他の楽器との兼ね合いを忘れてしまいがちです。EQ調整中は、必ずミックス全体で聴きながら、音がどう変化するかを確認するようにしてください。
今日からできること
まずはEQをかける前に、「何が邪魔なのか」を意識的に探す練習から始めてみてください。
そして、特定の音をブーストする前に、必ずハイパスフィルターとローパスフィルターで不要な帯域を削ってみる習慣をつけましょう。これだけでも、あなたのミックスは驚くほどクリアで自然なサウンドに変わるはずです。
まとめ
EQで音が不自然になる悩みを解決するには、「いらない音」を知り、それを「引き算」で削ることが何よりも重要です。
今回のポイントを3つにまとめます。
- EQは「足し算」よりも「引き算」が基本。
- 「いらない音」は、ソロではなくミックス全体で判断する。
- まずはハイパス/ローパスフィルターで不要な帯域をカットすることから始める。
今日からあなたのミックスに「引き算のEQ」を取り入れてみてください。きっと、驚くほどクリアで自然なサウンドが手に入るはずです。応援しています!

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