「せっかく高級マイクを買ったのに、音がこもってしまう…」「ヘッドホンで聴くと良くても、スピーカーで聴くとモコモコする」そんな不安や疑問を感じたことはありませんか?
この記事では、そんな「こもり音」を根本からスッキリ解消するための実践ガイドをお届けします。
ボーカルの音質を改善したい方、DTMでクリアなサウンドを目指したい方は必見です。
🔍「音がこもる」とは?その正体
一言で「こもる」といっても、さまざまな要因が絡み合って起こる現象です。
- 高域が失われている
- 中域が飽和してごちゃついている
- 音の抜けが悪く、前に出てこない
- 近接効果が強すぎる
このような要因を一つひとつ確認しながら、こもり音の改善に取り組んでいきましょう。
🎤音がこもる時の主要原因【徹底解説】
✅ ① マイクの位置・角度が適切でない
マイクのポジションは、録音時の「抜け感」や「こもり感」に直結します。たとえば、口に対して真っ正面からマイクを向けると、破裂音(P音やB音)や呼気の強い息が直接当たって、濁った音になりやすくなります。
- 理想的な距離:10〜15cm
- 理想的な角度:口の斜め45度前方(正面を避ける)
- NG例:マイクに近すぎて鼻息やリップノイズが入る、真上から吊っていて抜けが悪い
👉 近接効果も要注意。特にダイナミックマイクや大口径コンデンサーマイクでは、近づきすぎると低域が過剰になってこもる原因になります。
✅ ② 録音環境の問題(反射・吸音・遮音のバランス)
録音環境による音の回り込みや反射音は、意外と見落とされがちなこもりの原因です。
- 吸音材不足:声が壁や天井に反射 → 高域が打ち消されて曇る
- 吸音材過多:全体がデッドすぎて中域が濁り、ナローな音に
吸音のポイント:
- マイク背面
- 歌い手の背後
- 天井(マイク真上)
👉 OTODASUなどの簡易ブース使用時は、四面をすべて吸音するのではなく、「上半分だけ吸音」「下半分は空ける」といった工夫で、反射と吸収のバランスを取るのがベストです。
✅ ③ PADやプリアンプの設定ミス
意外に多いのが機材設定ミスによる音の鈍りです。
- PAD(アッテネーター)ONのまま:マイク入力感度が下がり、芯が失われる
- プリアンプのゲイン不足:レベル不足でコンプレッサーやEQの効果が出にくい
- プリアンプ内蔵EQの中域が盛られている:300Hz〜600Hzが膨らむことで、全体が濁る
👉 対策:
- マイクにPADスイッチがある場合は、まずOFFに
- プリアンプのVUメーターを見て、0VUを目指してゲイン調整
- EQ付きのプリアンプでは、中域をほんの少し抑えるだけで抜けが改善することもあります
✅ ④ 発声方法に原因がある
録り音がこもる根本原因が発声そのものというケースもあります。特にDTM初心者や、スタジオ未経験の方に多いです。
- 口の開きが狭い:声が共鳴せず、息っぽく抜けてしまう
- 鼻声/喉声:中域に余計なピークができ、抜けない印象になる
- 息の出し方が弱い/ブレている:声の芯が立たず、薄くこもる
👉 改善のコツ:
- 鏡を見ながら「母音」を大きくはっきり発音する練習
- 一度「読み上げ」で録音してみて、響きの変化を確認
- 息の流れを意識し、身体からしっかりと押し出すように発声
🛠 音がこもる時の実用対策
🎙 マイクポジションを見直す
マイクとの距離や角度は、録り音の明瞭さを大きく左右します。
- 距離:口から10〜15cmが基本。近すぎると近接効果で低域が盛られ、遠すぎると空間ノイズや反射音が入りやすくなります。
- 角度:真正面ではなく、口の斜め45度に向ける。これにより破裂音やリップノイズの抑制にもつながります。
録音中は、ポップガードを使用して距離を一定に保つことも忘れずに。
🧱 吸音材の配置を見直す
「どこに吸音材を貼るか」が録り音のクリアさを大きく左右します。
- マイク背面:最重要ポイント。反射音の跳ね返りを防ぐため、最低でもここには設置を。
- 天井(マイク真上):上部からの反射も意外と大きな影響を及ぼします。
- 歌い手の背面:声が直接反射するため、ここにも吸音があると明瞭感が向上します。
簡易ブース(OTODASUなど)を使っている場合は、「上半分を吸音・下半分を空ける」構成がおすすめです。デッドすぎず、自然な響きが得られます。
🎚 EQで不要な中域を整理する
こもった印象は中域(特に300〜600Hz)に原因があることが多いです。
- EQで300Hz〜600Hzを-2〜-4dB程度カットしてみましょう。
- Q幅はやや広め(0.7〜1.2)にして、自然な減衰に。
- ただしカットしすぎると声が薄くなるため、慎重に耳で判断を。
最終的にはオケとの混ざり具合で微調整するのがベストです。
🔊 ハイパスフィルターで低域を整理する
100Hz以下には不要なノイズや空調音が溜まりやすいため、カットすることでクリアになります。
- HPFの設定値:80〜100Hzあたりから徐々にカット
- フィルタータイプ:シェルビングよりもスロープの緩やかなローカット推奨(6dB/oct〜12dB/oct)
- 注意点:声の重厚感が欲しいジャンルではやりすぎない
🧠 マルチバンドEQやSoothe2などのプラグインを活用
こもりの帯域が常に変化するような場合、動的なツールが有効です。
- Soothe2:不要な共振や耳障りな帯域をリアルタイムで検出し自動カット。中域が濁る問題に特に効果的。
- FabFilter Pro-Q 3:ダイナミックEQ機能を使えば、300Hz〜1kHzの中域にだけ必要な時だけ効く処理が可能。
- マルチバンドコンプレッサー:声の濁りやすい中域だけを圧縮し、明瞭感を引き出す用途に有効。
静的EQでの処理に限界を感じたら、こういった動的プラグインを使うことで自然かつプロっぽい音に仕上げることができます。
🧰 機材別チェックリスト
録音音質に関わる基本機材は、ほんの小さなミスでも「音のこもり」につながる可能性があります。以下のチェック表で、自分の環境を再確認してみましょう。
機材 | チェックポイント | 解説 |
---|---|---|
マイク | ・正しく接続されているか? ・PADスイッチはOFFか? ・マイクカプセルは汚れていないか? | XLRケーブルがしっかり奥まで刺さっているか、PAD(アッテネーター)がONのままになっていないか確認しましょう。PADがONだと感度が下がり、音が曇ってしまいます。 |
ケーブル | ・断線やノイズの混入がないか? ・経年劣化していないか? ・コネクタが緩んでいないか? | ケーブルの接点不良や、古くなったケーブルではノイズが混入したり、高域が劣化することがあります。定期的に予備の新品と交換して比較テストを。 |
プリアンプ | ・入力ゲインが適切か? ・EQの設定がフラットか? ・VUメーターが適切な範囲にあるか? | ゲインが低すぎると録音の芯がなくなり、こもって聞こえる原因になります。VUメーターで-3dB〜0dB前後を目指して調整を。EQ付きの場合は初期状態での中域ブーストに注意。 |
オーディオインターフェース | ・入力レベルが適正か? ・ドライバやファームウェアが最新か? ・モニタリング音質に問題がないか? | 意外と見落としがちなのがIFのドライバ状態。古いドライバでは音の解像度が落ちることもあるため、メーカーサイトから最新を確認しましょう。 |
PC / DAW | ・CPU負荷が高すぎないか? ・バッファサイズは適正か? ・録音時のモニター音が遅れていないか? | 処理負荷やレイテンシが高いと、録音者の声がうまくモニタリングできず、無意識に発声が弱くなることがあります。録音時はなるべく軽量なプロジェクトにしましょう。 |
上記のチェックを習慣化することで、「録音するたびに音が違う…」といった悩みも激減します。プロの現場では、機材トラブルの予防が最も重要なスキルとされています。
🧪 自宅で出来る測定テスト
録音環境のこもりを数値や視覚で確認するために、専門機材がなくても自宅でできる測定テストがあります。以下の方法を活用すれば、「感覚」ではなく「客観的な判断」で改善点を見つけることが可能です。
📈 REW / FuzzMeasure を使ったスイープ測定
REW(Room EQ Wizard)やFuzzMeasure(Mac専用)は、部屋の周波数特性を測定できる無料〜低価格の音響分析ツールです。
- マイクを設置し、ホワイトノイズやスイープ信号を再生
- 部屋の周波数分布(ルームレスポンス)をグラフで表示
- 100Hz〜1kHz付近に異常なピークやディップがあれば、こもりの原因に直結
簡易的には、オーディオインターフェース+マイクがあれば十分テスト可能です。
🔬 OcenAudio によるスペクトル解析
OcenAudioは、無料で使える高機能オーディオエディター。録音したボーカルのスペクトル表示が可能です。
- 波形の右クリックで「スペクトルビュー」を選択
- 録音データ内の中域(300〜700Hz)にエネルギーが集中していたら要注意
- 理想的には、高域(3kHz〜10kHz)にもある程度のエネルギーが分布している状態
ビジュアルで確認できるため、「なんとなく曇ってる」という感覚が確信に変わります。
🔁 異なる位置での比較録音テスト
最もシンプルかつ効果的な方法は、録音位置を変えて比較することです。
- マイクの位置を3パターン(正面 / 斜め / 天吊り)で録音
- 吸音材の有無を変えて録音(例:背面のみ吸音 / 天井のみ吸音)
- それぞれをOcenAudioやDAW上で比較試聴・波形確認
「天井の反射音が原因だった」「吸音材の貼りすぎでデッドすぎた」といった要因が浮き彫りになります。
📌 測定時の注意点
- 測定時は、エアコンやPCファンなどをすべてオフにして静音環境に
- 測定音量は録音時と同等に調整
- 使用するマイクはコンデンサーマイクが理想(周波数特性がフラットなもの)
測定・比較を習慣化することで、「感覚だけで環境を作っていた頃」とは一線を画す、説得力のある録音環境が手に入ります。
❌ NG対策に注意:逆効果になる処理とは?
「音がこもるから〇〇をすればいい」と思ってやった対策が、実は音質を悪化させている…そんなケースは少なくありません。ここではやりがちなNG例と、その理由を徹底解説します。
🚫 吸音材の貼りすぎでデッドな音に
吸音材はたしかに反射音やこもり対策に有効ですが、貼りすぎると「生気のないモコモコした音」になります。
- 部屋全体がデッドになりすぎると、自然な響きが失われる
- 中域が濁って聞こえることも
- 音の拡がりや空気感がなくなり、狭い箱の中に閉じ込められたような音に
対策: 吸音は「バランス」が重要。特にOTODASUのような小型ブースでは、上半分だけ吸音・下半分を開放するなど、反射と吸収のバランスをとるのがコツです。
🚫 EQで無理やり高域をブーストする
「高域が足りない=EQで持ち上げればいい」と思いがちですが、これはこもりの根本原因を無視した応急処置であり、逆効果になることも。
- 5kHz以上を極端に上げると、耳に刺さるようなシャリシャリした音に
- ノイズやリップノイズまで増幅してしまう
- 全体のバランスが崩れ、不自然な音になる
対策: まずは録音環境やマイク位置を見直す。それでも不足している帯域のみを、ダイナミックEQやSoothe2などで補正するのが安全です。
🚫 リバーブのかけすぎで音がぼやける
「空間感を出すためにリバーブを…」という発想も、やりすぎは危険です。特にこもり気味のボーカルにリバーブを多用すると、輪郭が完全に埋もれてしまいます。
- サ行や破裂音がリバーブに引きずられて濁る
- ディレイ成分が過剰になり、ピッチ感やニュアンスがぼやける
- 全体が遠くに感じられ、前に出てこない印象になる
対策: センドリターンで濡らしすぎない処理を行う。高域のリバーブ成分をローカット / ハイカットして、邪魔にならない空間処理を意識しましょう。
📌 NG対策まとめ
- ✔ 本質的な原因に向き合う:音がこもる理由を正しく突き止める
- ✔ 効果よりバランス重視:極端な処理は逆効果になりやすい
- ✔ 耳で聴くだけでなく目で確認:スペクトルや波形で視覚的にもチェックする
「こもり=EQで上げれば解決」という思い込みを捨て、環境・マイク・発声・ミックスのすべてをバランス良く見直すことが、プロ品質への第一歩です。
📘 まとめ:クリアなボーカル音質は「環境 × 技術 × 感覚」
ボーカル録音における「こもり感」は、ちょっとした工夫と検証で驚くほど改善できます。
「こもるのは仕方ない」とあきらめず、一つひとつ丁寧に対処して、あなた本来の声をクリアに届けましょう!
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