「せっかく買ったマイクで録音したのに、なんだか音がペラペラに聞こえる…」「ボーカルに厚みがないし、奥行きも感じられない」
そんなお悩み、きっとあなたも経験したことがありますよね。私もDTMを始めたばかりの頃は、まさに同じ壁にぶつかっていました。
「もっと良いマイクを買えば解決するのかな?」そう思ってしまう気持ち、とてもよくわかります。ですが、実はその「ペラペラ感」の犯人は、マイクそのものではないかもしれません。
この記事では、あなたの録音した音がなぜ安っぽく聞こえるのか、その本質的な理由を深掘りします。そして、今日からすぐに実践できる具体的な対策を交えながら、あなたのサウンドを劇的に変えるためのヒントをお届けします。もう「マイクのせい」にするのは終わりにしましょう。
録音した音がペラペラなのは「マイク」より「空気」のせい
マイクは「音を作る」道具ではありません
多くの方が誤解しがちなのですが、マイクは音を「良くする」魔法の道具ではありません。マイクの役割は、目の前にある「空気の振動」を、できる限り忠実に電気信号に変換することなんです。
つまり、マイクが拾っているのは、あなたの歌声や楽器の音だけではないということ。マイクは、その音源が鳴っている部屋の「空気」がどう振動しているか、その情報もすべて拾い上げてしまうのです。
例えば、お風呂場で歌うと響いて聞こえますよね。それは、硬い壁に音が何度も反射して、残響がたくさん生まれるからです。同じような現象が、あなたの録音環境でも起きている可能性があります。
特に、家具が少なかったり、壁が硬かったりする部屋では、特定の周波数帯の音が大きく反響しやすくなります。これを「定在波(ていざいは)」と呼ぶのですが、この不自然な反響音が、録音された音に「奥行きがない」「安っぽい」という印象を与えてしまう原因になるのです。
マイクは、その部屋の響き、つまり「空気」そのものの音をも、忠実に捉えているのですね。
「マイクのせい」か「環境のせい」か、判断の軸を持つ
マイクが拾っている「情報」を意識する
では、自分の録音音がペラペラなとき、それが本当にマイクの性能不足なのか、それとも環境の問題なのかをどう見極めれば良いのでしょうか。
判断の軸は、「マイクが何を、どのくらいの距離で拾っているか」を意識することです。
例えば、ボーカルを録音する際、マイクを口元にかなり近づけても、まだ音がペラペラだと感じるとしたら、それは部屋の響きが影響している可能性が高いでしょう。
マイクには「指向性(しこうせい)」という特性があります。これは「どの方向の音を拾いやすいか」を示すものです。例えば、多くのボーカルマイクで使われる「単一指向性」のマイクは、正面の音を最もよく拾い、横や後ろの音は拾いにくく設計されています。
しかし、完全に横や後ろの音を遮断できるわけではありません。部屋の中で音が反射し、マイクの正面以外の方向から「反射音」として入ってきてしまうと、それが録音に悪影響を与えてしまうのです。
「求める音のクリアさ」と「自然な響き」のバランス
あなたの求めるサウンドは、どんなものでしょうか?
- カラオケのような、部屋の響きがほとんどない、ドライなボーカル?
- ライブハウスのような、豊かな残響に包まれたアコースティックギター?
録音において大切なのは、「求める音のクリアさ」と「部屋の自然な響き」のバランスをどうコントロールするかという判断軸を持つことです。マイクの特性を理解しつつ、「このマイクで、この部屋で、どんな音を拾うべきか」を常に問いかけるようにしましょう。
今日からできる!「空気」を味方につける実践アプローチ
1. 部屋の反響をコントロールする
「吸音材をたくさん買わないとダメなんですか?」と心配になるかもしれませんね。大丈夫です、まずは身近なもので試してみましょう。
【失敗パターン】
「吸音材」と聞いて、まず壁一面に貼る専門的なパネルをイメージしがちです。しかし、高価な吸音材を導入しても、設置場所が適切でないと効果は半減してしまいます。
【今日からできること】
- 厚手のカーテンや毛布、布団を活用する
特に、マイクの背後や、マイクと壁の間など、音が反射しやすい場所に設置しましょう。
例えば、マイクの背後や左右の壁に、厚さ10cm以上の布団や吸音材を配置してみてください。これで不要な反射音が約6dB(デシベル)ほど低減されることがあります。これは体感的にかなり違いがわかるはずです。
- 本棚やクッションを置く
本棚に本をぎっしり詰めるだけでも、音が拡散され、反響が抑えられます。クッションやソファなども、吸音効果がありますよ。
- 部屋の角を意識する
部屋の角は音が集まりやすく、特定周波数の反響が強くなりがちです。ここにも厚手のものを置くと効果的です。
2. マイキングを工夫する
マイクの位置や角度を少し変えるだけで、驚くほど音が変わることがあります。
【失敗パターン】
「マイクは音源にまっすぐ向けるものだ」と思い込んで、部屋の真ん中に設置してしまいがちです。しかし、これでは部屋の反響音も効率よく拾ってしまいます。
【今日からできること】
- マイクと音源の距離を調整する
ボーカルの場合、口からマイクまで「握りこぶし1〜2個分(約10〜20cm)」を目安にしてみてください。近すぎると低音が強調されすぎ(近接効果)、遠すぎると部屋の音が優勢になります。マイクの特性を活かし、一番クリアに聞こえる距離を探しましょう。
- マイクの角度を微調整する
ボーカルの口元に対し、マイクを少しだけ軸から外す(「オフアクシス」にする)と、ポップノイズ(「パピプペポ」などの破裂音)の低減だけでなく、部屋の反射音をわずかに減らす効果も期待できます。
- 録音する場所を変えてみる
部屋の中心よりも、壁から少し離れた場所や、クローゼットの前など、響きが少ない場所を探してみましょう。デッドな環境(響きの少ない環境)を作ることで、音の芯がはっきりと録れるようになります。
3. 適切なゲイン設定を心がける
マイクで拾った信号をどれくらいの大きさでオーディオインターフェースに取り込むか、その設定が「ゲイン」です。
【失敗パターン】
「音が小さいよりは大きい方がいいだろう」と考えて、ゲインを上げすぎてしまうことがあります。しかし、ゲインを上げすぎると、目的の音だけでなく、部屋のノイズや反響音までも大きく増幅してしまいます。
【今日からできること】
- DAWのピークメーターを確認する
録音時の音量は、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)のピークメーターが、一番大きい音が出たときに-12dB〜-6dB程度になるように調整しましょう。
少し小さいかな、と感じるくらいが実はちょうど良いのです。録音後に音量を大きくすることは簡単にできますが、一度歪んでしまった音は元に戻せませんからね。
- マイクとプリアンプの相性を知る
お使いのマイクの感度(どれくらいの音量で信号を出すか)と、オーディオインターフェースに内蔵されているプリアンプ(マイクの信号を増幅する回路)の性能も意識してみましょう。低感度のマイクならプリアンプのゲインを上げる必要がありますし、高感度なら上げすぎに注意が必要です。
まとめ:空気のコントロールが、あなたの音を変える
録音した音がペラペラに聞こえるのは、高価なマイクがないからではありません。ほとんどの場合、マイクが拾っている「空気(録音環境)」が原因なんです。
今日の記事でお伝えした要点は、この3つです。
- マイクは目の前の「空気の振動」を忠実に拾う道具である
- 部屋の不自然な反響音が、音をペラペラにしている
- 部屋の反響コントロール、適切なマイキング、ゲイン設定で劇的に改善できる
「良いマイク」よりも、まずは「良い環境」と「良い知識」が、あなたの録音を劇的に変える第一歩です。今日からできることを一つずつ試して、理想のサウンドを追求してみてください。きっと、あなたの音楽制作がもっと楽しくなるはずですよ。

コメント